ニューオリンズの「死者の街」、永遠の眠りを美しく飾る、世界でも珍しいその墓地文化とは?

ルイジアナ州ニューオリンズには「死者の街」と呼ばれるほど、大きな墓地が数多くあります。しかも、それらの墓地は、ニューオリンズにとって大切な観光資源なのです。たとえ、縁者が埋葬されていなくとも、世界中から観光客が押し寄せます。今回は、ニューオリンズの墓地が注目される理由と、現存する有名な墓地をご紹介します。

 

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ニューオリンズの墓地について

 

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ニューオリンズにある大半のお墓は、地面の上につくられています。つまり、埋葬をしないのです。むしろ、しないというより、できないといったほうが正しいかもしれません。ニューオリンズは海抜ゼロメートル、場所によってはマイナスを記録するスープ皿のような地形です。元々地盤が弱い上に、ミシシッピ川の氾濫やハリケーンの到来など、多くの自然災害にも見舞われてきました。そのため、洪水や浸水が頻繁に発生、死者を水害から守るためにも地上にお墓を設けるようになったのです。ニューオリンズの墓地は、他では見ることのできない、独特の世界観を放っています。まさに死者の家と呼ぶにふさわしい、風格のある佇まいを感じられることでしょう。

St. Louis Cemetery No. 1(セント・ルイス・セメタリー・ナンバーワン)

 

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ニューオリンズに現存する最古の墓地、St. Louis Cemetery No. 1。1700年代の後半に開園され、映画『イージー・ライダー』のロケ地として使用されたこともある人気の墓地です。また、ブードゥー教の女王マリー・ラヴォーやニューオリンズ初のアフリカ系アメリカ人市長アーネスト・モリアルなど、歴史上で重要とされる人物が眠っています。さらに、カリフォルニア出身なのにニューオリンズが大好きな俳優、ニコラス・ケイジも園内に自分用のピラミッド型のお墓を所有しているのだとか。

St. Roch Cemetery(セント・ロクス・セメタリー)

 

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St. Roch Cemeteryは、健康を司る聖ロクスとピーター・デイヴィス牧師という偉大な歴史上の人物に由来する墓地です。1800年代後半、ニューオリンズで黄熱病が猛威を振るい、多くの死者がでました。ドイツから渡米したデイヴィス牧師は、聖ロクスに祈りを捧げました。

彼の祈りは届き、近隣の地区内からは黄熱病の感染者があらわれなくなったのです。デイヴィス牧師は感謝の証として、St. Roch Cemeteryを建立しました。St. Roch Cemeteryには、今もなお健康の御利益があると伝えられています。墓地の真ん中にあるチャペル内には、健康になった人々のお礼の気持ち(コインや人形、義足など)が奉納されおり、お墓参り以外の目的で訪れる人も少なくありません。

Metairie Cemetery(メタリー・セメタリー)

 

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ニューオリンズの中でも、特に洗練された美しい墓地が見所とされるMetairie Cemetery。もとは経営破綻した競馬場、Metairie Race Courseを再利用して作られた墓地です。彫刻像などが多く、芸術性に富んだ静かで不思議な光景が広がります。

また、チャップマン・ハイアムズのお墓にあるWeeping Angel(嘆きの天使)は、多くのゴシック・ロックバンドのアルバムジャケットにも使用される影響力の強い彫像です。青いステンドグラスの光にてらされて悲しむ天使の姿は、見る者の心を揺さぶります。

ニューオリンズの墓地には、不気味さを通り越した人々を引き寄せる魅力があります。亡くなった人の冥福を祈る場所でありながら、生者を受入れてくれる寛容さも感じられる場所です。つい、時間が経つのも忘れ、墓地をさまよい歩いてしまうかもしれません。静かだけど賑やか、儚げだけど存在感が大きい、そんなニューオリンズ独自の墓地文化に触れてみてください。

 

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