いじめ問題を隠す日本と隠してはいけないアメリカ、アメリカでいじめの現状に関するインタビューを行ってみました!

「いじめ」に関して、日本での問題の解決の一助になればと思い、アメリカの状況を調べてみました。いじめの英語は “Bullying” ですが、アメリカも日本と同じようにいじめを苦に自殺するケースが起こっており、それを “Bullycide” という新語ができているように、アメリカでもいじめの問題は深刻です。

更に、日本ではインターネットや携帯電話の「ライン」を使っての誹謗中傷についても、アメリカでは “Cyber Bullying” と呼ばれ、問題視されています。

アメリカでのいじめの現状についていろいろな資料をもとに調査すると同時に、実際に高校の先生(インディアナ州の高校)、元テレビのインタビュアー(女性)、父兄(お母様)、大学生と高校生の方々にインタビューしました。

確かに「いじめ」はアメリカでも深刻な問題なのですが、日本とは対応が大きく違うようです。日本のいじめの問題は、隠ぺいされ表面化しないことで陰湿になりがちのようですが、アメリカではもっと関係者がオープンで対応も迅速のように思えました。アメリカでは、いじめの問題が起こったことに対する責任よりも、起こった問題を解決しないことへの責任の方が問われるからだと思われます。 いろいろな方々のインタビューを通じ、平均的な意見をまとめてみました。日本のいじめ問題への対策に有効と思えるものが散見されました。それぞれの意見は、インタビューした方々を一人称とした言葉で表しています。

(本記事は、カリフォルニアから全米の生活情報をお届けするメディアU.S. Frontlineからの転載記事です。オリジナル記事はU.S. Frontline 2017年3月15日号(前半)と2017年4月1日号(後半)に掲載されております。また、U.S. Frontlineでは最新ビジネス動向から、アメリカ生活に役立つ教育、医療、法律関連情報から全米各地のコミュニティ情報やグルメ、旅行、エンタメといったジャンルを幅広くカバーしておりますので、是非、本記事以外の面白い内容のものを見つけてみてください!)

 

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1.中学校からクラスが存在しない

 
 
 
 
 
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(ある父兄の方の意見): アメリカでは日本的「いじめ」をあまり聞いたことがありません。その大きな要因は、中学校からクラスが存在しないからではないでしょうか。中学校からは、必須科目とそれ以外は選択科目となり、授業は科目ごとに常に教室を移動します(その移動時間は僅かに5分で、数分遅れても遅刻とされます)。クラス制度の良否は多々あると思います。例えばメリットとして、クラスがあれば運動会や文化祭など組織として一致団結して物事を成し遂げる、そしてそこにチームワークなど互いの連帯感を培えるなどがあると思います。しかし、アメリカではそのような共同作業による行事がありません。一方で、クラスが無いことで交友関係が固定化しないため、グループで一人をいじめるという状況が生じにくいようです。

いじめ問題の克服を喫緊の重要課題とするなら、一度クラス制度を廃止してみてはどうでしょうか。先ずいじめ問題を解決することが優先されるべきでしょう。その結果、やはりクラス制度があった方が良いのならまた復活させるような柔軟性のある対応が許されるべきだと思います。 クラスが存在しないことは、すなわちクラス担任の先生がいないことを意味します。アメリカでは中学校以上は、日本でいうクラス担任は存在せず、代わりにその役目を果たすカウンセラーがいます。進学、生活関連、学業など、あらゆる事柄や問題の相談相手となります。しかし、学校側のカウンセラーから生徒や父兄にアプローチはしません。あくまで生徒又は父兄からアポイントメントを取って相談する形で対応されています。日本のクラス制度では、先生方(クラス担任という職責)の負担が余りにも過大で重く、超過勤務を強いるだけでなく、責任を全うすることが難しいように思われます。

2.アメリカの生徒は多面的社会を持つ

 
 
 
 
 
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(別な生徒の母親の言): いじめが生じない別の要因は、アメリカの生徒たちを見ていると多面的社会を持っていることだと思います。多面的社会とは、子供たちにとって学校が日常生活の全てではなく、個々にいろいろな社会を持っていて(ボランティア活動、ソサイエティー、音楽、スポーツ、趣味など)同じ学校の仲間ではなく、交友関係が多面的です。

私の子供たちを見ていると、交友関係は極めて自由でお互い気に入らない、又は相性が良くないと思えばあえて無理をして付き合うという関係は一切ありません。これを裏付けるものとして、 (その母親の高校三年生の娘さんの言): 日本のことは知りませんが、アメリカの学生たちは、自己肯定が非常に強いと思います。

一方で自分以外の人を認める(認めなければいけない)能力にも長けているように思います。例えば、アメリカの学生の中には、必ずしもグループに属する(群がる)ことを好まず独りでいたい人もいますが、そのような場合、周りはその人を認め独りでいられるように配慮します。 (筆者の感想)この母親と生徒の言から浮かび上がってくるのは、日本人は常にグループ又は仲間に属していないと不安という性質があるように思えますが、もともと農耕民族(集団の必要性)と欧米の狩猟民族(個別行動が基本)の長い歴史と文化の違いから来ているのかも知れません。

3.問題への対応が非常にオープン

 

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(ある生徒のお母さんの言): 私の子供たちはいじめを殆ど経験しませんでしたが、時には個人的な争い(暴力行為)は起こります。その場合、学校側の対応は極めてオープンで、暴力行為にはその場で警察の介入を求めますし、その問題が隠ぺいされることは絶対にありません。そして問題への対応も極めてオープンで当事者だけでなく学校関係者や父兄生徒にも情報が共有されます。

このアメリカの学校の問題に対するオープンさは、日本での問題への対応がややもすれば学校も家庭も本人も隠ぺいしがちで、それ故に問題がさらに深刻化するという環境とは、正反対に位置すると思います。その違いの理由は、アメリカでは問題が起こることに対する責任よりも、問題が起こったあとの解決への対処に対する責任の方がはるかに重いからではないでしょうか。

4.高校の先生のインタビュー

 

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インタビューを受けて頂いた高校の先生は、先にインタビューした生徒の高校において生徒から最も信頼され尊敬されている先生なのでぜひ会って話しを聞くと参考になると紹介を受けた方です。実際に会ってみると、教育に対し筋の通った信条をお持ちの素晴らしい先生でした。 (インタビューを受けて頂いた先生の言): 自分自身も小学校の頃にいじめを受ける経験をしました。いじめられていることを父にオープンに話したところ、父はいじめの相手の家族と直接対話の場を設けてくれて、両方の家族で話し合うことで問題を解決してくれました。

その経験から自分は、いじめの問題(のみならずいかなる問題)への対応策は一つしかないと考えています。 それは、The key is “communication” = “dialogue” 「対話」 だと言い切ることができます。 その先生から一枚のペーパーを頂いたのですが、彼が受け持つクラス(担任ではなく教える全部のクラス)の生徒全員に、各学年の初日に守るべき規則として必ず配布するものだそうです。

その規則はたった三つなのですが、 1.Be Respectful 2.Be Prepared 3.Be Positive それぞれに付された説明は、なるほどと感心させられるものでした。特に、”Be Respectful”の一つだけ守られれば、いじめの問題は解消するのではないでしょうか。そのルールを訳すと次のような内容でした。Be Respectful = (いかなる他人にも)敬意を表しなさい。 聞け、さもなくば汝の舌を沈黙させよ。(アメリカインディアンの諺) 他の人たちに、自分がしてもらいたいことをしてあげなさい。私が絶対許せないことは、「人を軽んじること」です。

私たち全員それぞれが異なった経歴そして異なった環境で育っています。あなた達は他の人たちのあるがままを敬意をもって受け容れなければいけません。あなた達は互いに優しくあらねばなりません。あなた方の若い年齢の人たちは(全ての年代の人たちも同じなのですが)時には他人に対し不親切かつ冷酷な仕打ちをすることがあります。私のクラスではそれは絶対にあってはなりません。私たち「誰一人として」欠点がない人はいません。なぜなら私たちは人間だからです。

私は「誰一人として」自分の考えや感情を表現することにためらって欲しくはありません。他の人たちにオープンに打ち明け共有してもらうには勇気が必要です。私は他のいかなる人へのrude or unkind words, gestures, noises, or facial expressions(適切な訳語が思いつかないのでそのまま引用)を許しません。もしあなたがこれらに否定的な人だとしたら、あなたはまさに自らを変えねばならない人です。

アメリカでもいじめは深刻な問題ですが、その対応に関して日米の差を色濃く感じます。すぐに警察を呼ぶなどのオープンさが、日本にも必要なのかもしれません。ソーシャル・ネットワーク上で話題に登ることも多いですが、何かオカシイと思えば、すぐにでも他の人と共有できる勇気が必要なのです。冒頭でご紹介した本記事のオリジナル提供元のU.S. Frontlineでも様々なジャンルの記事を取り扱っておりますので、是非一度ウェブサイトを訪れてみてください。

 

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