アメリカの日本語補習校で共に学ぶ「帰国組」と「移住組」の比較、それぞれの学習方法の違いとは?

アメリカに一時的にせよ長期的にせよ滞在する場合、駐在員家族でお子さんがいらっしゃる場合、子どもの教育がとても気になりますよね。筆者が11年前にアメリカに移住してきた時、息子の英語と日本語教育には心身ともにかなり苦労しました。それが現在、日本語補習校で講師として指導する立場になり、各家庭の教育事情について精通してきました。そこで今回は、講師としての筆者の経験を元に「帰国組」と「移住組」の事情をお伝えします。

 

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「帰国組」とは?

日本で教育を受けてきて、当然日本語はできて学力も上レベルの子供たちが、保護者の都合により2~5年をアメリカで過ごし、その後帰国するご家庭をアメリカの日本人コミュニティでは「帰国組」と呼ぶことがあり、本記事もそれに倣います。アメリカでの滞在期間中、日本語と学力をキープしたい、できれば英語も得意科目にしたいというモチベーションがあるので、親子ともに補習校での勉強を頑張る傾向にあります。補習校から山ほど持ち帰る宿題を、親が子どもに付いて毎晩のように見ています。

中には遅れを取ってはいけないと、家でホワイトボードを使って必死で漢字を教える父親もいます。子どもは漢字を習っても使わないとすぐに忘れるので、繰り返し家庭で復習しています。子どもは家庭では日本語を話し、現地校ではすぐに英語を覚えてきます。滞在が長くなると、両親との会話は日本語で、兄弟姉妹間では英語を話している家庭もあります。

「移住組」とは?

「帰国組」を紹介しましたが、一方、日本で生まれ幼児期を過ごし、途中からアメリカに移住してきた国際結婚の家庭や、生まれも育ちもアメリカの日本人家庭など日本に帰国の予定がない家庭を「移住組」と呼びます。日本語補習校に通う理由は各家庭様々ですが、移住組は日本語そのものを上達させるために子どもを通わせることが多いようです。

子どもはアメリカで日本語を学ぶモチベーションがあまりなく、現地校の勉強やスポーツや友だちの方が大切で、英語の方が得意になる傾向があります。親は子どもに日本語を継承したいので家庭で日本語を話しますが、子どもは英語で答えています。または親とは日本語で、兄弟姉妹とは英語の会話をしています。補習校の勉強は親子ともお互いに葛藤を感じています。その結果、補習校で授業を受けるだけでも良しとして、読み書きの習得は諦めている保護者もいます。長い夏休みに日本に一時帰国して、小・中学校で体験学習をし、日本語力をつけるのも恒例になっています。

「帰国組」と「移住組」の学力差のある生徒をどう指導していくか?

小規模校では能力別にクラス分けをする余裕がないので、勉強の進み具合に差がある子同士が同じクラスで勉強しています。勉強に意欲があり、先に進みたい子には教科書の問題以外にも、どんどん課題を与えたりプリントを配るなどして、ゆっくりな子が追い付いてくるまでの時間を有効に使って、子どもが時間を持て余すことなく足並みを揃えています。

早く進んでいる子が授業中に取り組む課題は、ゆっくりな子には自由宿題にして持ち帰らせ、保護者と連絡を取りながらなるべく家庭でやってくるように指導しています。また、生徒には学校図書をできるだけたくさん借りて読ませます。早く進んでいる子にはその感想文を書かせたり、作文の指導をしながら力をつけさせています。ゆっくりな子には難しい本は強制せず、映画や日本の歴史の漫画を貸し出して、勉強すること自体の負担を少なくしています。

手厚いサポートで成功させる

毎回授業終了後には、講師が授業の内容詳細を一斉にメールで報告するので、保護者は子どもの進度や宿題などを確認しています。学期末には通知表を手渡します。講師は個人に合わせて帰国準備をさせたり、勉強に遅れすぎる子どもが出てこないように工夫しながら手厚くサポートしています。さらに、本人と保護者が申し出て学校が承認すれば、ゆっくりな子は1学年落として授業を受けることもできます。日本の学校へ編入する関係で、できる子の飛び級は認められていません。

補習校関係者やご家庭、その他日本人コミュニティの手厚いサポートがあるからこそ、それぞれ環境が異なる帰国組と移住組が共に同じクラスルームで学ぶことができることをお分かりいただけたでしょうか?補習校ではバックグラウンドも学力も違う生徒たちが、色んな意味で刺激し合いながらお互いを認め合い、仲良く一緒に学習しています。今回ご紹介したこと以外にも、まだまだ補習校に関する話は尽きませんので、何か補習校に関するご質問などがありましたら、mAmericaご相談フォームよりお気軽にご連絡ください。

 

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