帰国子女の私立中学・高校選び、思い込みや古いイメージで学校を選んでいませんか?

アメリカの現地生活情報誌『Lighthouse』からの転載記事です。アメリカの現地生活情報誌『Lighthouse』では最新ビジネス動向から、アメリカ生活に役立つ教育、医療、法律関連情報から全米各地のコミュニティ情報やグルメ、旅行、エンタメといったジャンルを幅広くカバーしておりますので、是非、本記事以外の面白い内容のものを見つけてみてください!)

※本コンテンツは「ライトハウス 秋の増刊号 2016年」に掲載されました。 ☞POINT ・情報を数多く集めることは簡単。難しく、しかも大切なのはどの情報が信頼できるか見極めること。 ・クチコミ情報は「真偽不明」と捉えるべし。 ・学校説明会などを活用し、まずは正確な情報を手に入れよう。

思い込みや古いイメージで学校を選んでいませんか?

中学、高校探しを始めたときに、気をつけなければならないのがお父さん、お母さんが中学生・高校生だった頃の情報やイメージ。かつてのイメージや古い情報は、思い込みや誤解の原因となってしまうのです。 帰国子女はいじめられる? お子さんの帰国後の中学、高校選びの様子を見ていてまず感じるのは、思い込みや誤解にとらわれている方が意外に多いということです。もっともよく聞く誤解が「帰国子女は、一般の子どもたちからいじめられる」というもの。いじめを恐れて、公立は避けよう、なるべく帰国子女の多い学校にしようと考えるお父さん、お母さんは少なくないようです。たしかに、帰国子女がいじめの対象になりやすい時期もありました。しかしそれは、帰国子女や、いわゆる「外人」がまだまだ珍しい存在だった時代の話です。グローバル化が進んだ現在の日本では、「帰国子女だから」というだけで差別されたりすることなく、楽しく学校生活を送っている帰国子女もたくさんいます。 それ、いつの情報? 実は海外在住の方に限らず、お子さんの中学、高校選びをされている保護者の方々は、同様の「誤解」や「思い込み」をされます。理由は簡単。皆さん、ご自身が中学・高校受験をされたころのイメージや情報に捉われてしまっているのです。この20〜30年の間、日本の教育界を取り巻く状況は大きく変化を続けています。ところがほとんどの人々は、ご自身が学校を卒業した後は、教育界に対してあまり興味をもたなくなります。情報もあまりお持ちではないでしょう。しばらく海外での生活が続いていれば、なおのことです。それは自然なことですが、そのことをきちんと認識しないままでいると、子どもにもかつてのイメージや古い情報に基づいた学校選び、つまり、誤解や思い込みによる学校選びになってしまうのです。 「初耳」の学校名でも もちろん、変化しているのはいじめの有無だけではありません。学校の取り組みにも変化が見られます。私立校の中には、新たな取り組みが評価され、ここ数年で急速に人気が高まっている学校があります。その中には、帰国子女の受け入れに積極的な学校もあります。新しく伸びてきた学校ですので「聞いたことのない学校名だな」で片付けてしまうと、せっかくの選択肢を失うことになってしまいます。名門校や伝統校と呼ばれる学校も昔と同じではありません。伝統を守りながら、帰国子女の受け入れを含めたグローバル教育の推進に舵を切った学校もあります。以前のイメージだけで学校選びをしていると、こういった学校を見逃してしまうことも考えられます。各学校の「今の姿」を見ることを心がけながら、学校を選ぶことが大切です。 地域差にも要注意 誤解や思い込みの原因は、古いイメージや情報だけではありません。地域による違いも無視できません。中学受験、高校受験のしくみや傾向は、実は地域による違いが大きいもの。たとえば東京出身の方が帰国後は関西にお住まいになる場合、あるいは、地方都市出身の方が首都圏にお住まいになる場合などは要注意。「中学・高校受験はこういうものだ」という思い込みを持つと危険なのです。 ☞POINT ・保護者は、自分が中学生、高校生だった頃のイメージで、学校選びに取り組みがちなもの。 ・日本の教育界、学校を取り巻く状況は大きく変化している。 ・各学校の「今の姿」を見て学校を選ぶことが大切。

どんな学校を選べばいいのか迷ったら、3つのタイプに分けて考える

帰国子女を受け入れている中学、高校でも、その取り組みや体制はさまざま。帰国後の学校探しに迷ったら、その学校がどんな立ち位置で帰国子女を受け入れているのか、3つのタイプに分けて考えてみましょう。 受け入れ先は必ずあるが 帰国後の中学、高校選びをしていると、「行ける学校がどこもなかったらどうしよう」という漠然とした不安を感じる方もいらっしゃるようです。もちろん、そのような心配は無用です。試験の合否はありますが、公立校も含め、行き場がどこにもないということは絶対にありません。そのことを踏まえて、学校選びに取り組んでいただきたいと思います。ただ、そのことは、帰国子女の受け入れ体制がどこも同じだということを意味しているわけではありません。帰国子女の受け入れ方は学校によって異なります。ご自身のお子さんをどういう学校に行かせたいか、お子さんの希望はどうかといったことを考えながら、学校ごとの違いを見ていく必要があります。 受け入れ校には3つのタイプ ひとことで「帰国子女の受け入れ」と言いますが、その体制には大きく分けて3つのタイプがあります。そのどのタイプがいい、悪いというわけではありません。しかし、タイプが違えばそこでお子さんが過ごす3年間、あるいは6年間は大きく違ってきます。帰国後、お子さんにどんな中学・高校生活を送ってほしいかを考えながら、どのタイプの学校に行かせるべきなのかを見極めなくてはなりません。 1.単純受け入れタイプ ひとつめのタイプは、「基本的に受け入れるだけで、帰国子女を特別扱いはしない」という中学、高校です。公立校のほとんどはこのタイプですし、私立校でも少なくありません。帰国子女向けではないように見えてしまいますが、一概にそうとも言えません。中学、高校を卒業後も日本の社会で生きていくのであれば、帰国子女だからと言っていつまでも特別扱いされるわけではありません。ならばできるだけ早いうちから帰国子女以外の子どもたちとも交流し、日本社会に慣れてほしい……と考えるなら、このタイプが適しているでしょう。 2.帰国子女枠設定タイプ 二つめは、一般の生徒とは別に「帰国子女枠」を設けたり、帰国子女入試を実施したりしている中学、高校です。帰国子女の場合、国内とは大きく異なる教育を受けています。また、学習以外の面でもさまざまな体験をし、能力を身に付けているはずです。そういった面も評価すべきであり、入学後も生かしていこうという学校が多いようです。ただし、入学後の体制を見てみると、帰国子女だけのクラスを編成する学校もあれば、帰国子女と一般生徒を同じクラスにする学校もあります。学校説明会などの機会に確認しておいたほうがいいでしょう。 3.帰国子女が中核タイプ 最後は、積極的に帰国子女を受け入れることを含め、グローバル教育に力を入れていこうという中学、高校です。帰国子女など海外体験のある生徒を中核とした学校づくりを進めており、帰国子女ならではの特性を伸ばすことを望んでいる場合や、将来的には再び海外で生活することなどを考えている場合に適した学校ということができるでしょう。 ☞POINT ・帰国子女を受け入れている学校には3つのタイプがある。どれをめざすかの見極めが必要。 ・タイプ1…単純に受け入れるだけ ・タイプ2…帰国子女枠を設定したり、帰国子女入試を実施 ・タイプ3…帰国子女などが中核の学校

「帰国子女ならではの特性を生かす教育」ってどんな教育のこと?

帰国後も、海外で生活してきた帰国子女ならではの経験や能力を生かせる教育を受けさせたいと考える方は多いようです。しかし、「帰国子女ならではの特性」という言葉からイメージすることは学校によって、人によって違いがあることを知っておく必要があります。 「帰国子女の特性」とは? 帰国後の中学、高校選びの中で、「帰国子女ならではの特性を生かすことができるか」ということを条件にされている方も多いと思います。せっかくの海外経験。日本国内にいたのではなかなかできない経験や、身につけることのできない能力や感覚を得たのだから、帰国後、みすみすそれを忘れさせてしまうような学校に入ってしまったのではもったいない—というわけです。ただ、この「帰国子女ならではの特性」というものが、意外と漠然としたイメージでしか捉えられていないことを、しっかり認識しておかなければなりません。 さまざまなイメージ ひとことで「帰国子女ならではの特性」といいますが、その言葉の表すものは多岐にわたります。もっともポピュラーなのが「英語ができる」というもの。さらに、「自己主張をきちんとすることができる」「コミュニケーションスキルが高い」「グローバル化に対する感覚に富んでいる」「他人の個性を尊重し、自分も個性的である」「古い考え方にとらわれない」などさまざまです。しかし、実際に海外で暮らしている方ならすぐにお分かりになる通り、これら全てを兼ね備えた帰国子女などいません。なかには英語が嫌いな帰国子女だって、自己主張が苦手な帰国子女だっています。一般に広まっている「帰国子女ならではの特性」が、いかにステレオタイプなものか、実際に体験された方も多いのではないでしょうか。 特性の認識を確認する 「帰国子女を積極的に受け入れます。そして、せっかくの海外経験で培われた帰国子女ならではの特性を伸ばせる教育を行います」と言っている中学、高校は少なくありません。そこで確認していただきたいのが、その学校は、「帰国子女ならではの特性」とはどんなことだと捉えているのか、また、「特性を伸ばす教育」とは具体的にどのようなことを行うのか—ということです。英語の授業は帰国子女だけで行い、ネイティブの先生がテーマを決めて英語で議論させ、英文法についてだけは日本人の先生教師が教えているケースも見られます。また、帰国子女が苦手とすることが多い国語、社会科については、低学年の段階では帰国子女だけで行い、学年が上がるにしたがって一般生と同じに授業になるというパターンもあります。いずれの学校も、その学校なりに「帰国子女の特性」を捉え、さらに伸ばしたり、フォローしたりしているのです。 特性にこだわらない選択肢も ところで、念のため申し上げますが、帰国子女だからといって、帰国子女の特性を重視する中学、高校でないとだめだというわけではありません。海外滞在中に不足していた日本や日本文化についての教育に力をいれている学校に通わせたい――という判断もあると思います。それはそれで素晴らしい見識だと思います。くり返しになってしまいますが、お子さんにどんな教育を受けさせたいのか、その考えをもって学校を選ぶことが重要なのです。 ☞POINT ・「帰国子女ならではの特性を生かす」というが、その特性のとらえ方はさまざま。 ・その学校が考える「帰国子女の特性を生かした教育」の具体的な中身を確認する必要がある。 ・「帰国子女ならではの特性」にこだわらない学校選びもあり得る。

進学実績は大切だがそれだけで表れない取り組みもある

中学、高校選びで、各学校の進学実績は気になるもの。それは確かに重要な情報のひとつですが、幅広い進路指導の可能性を示しているわけではないということを認識しておく必要があります。お子さんが何をめざしたいのかを踏まえた学校選びのためには……。 進学実績は一つの目安 中学、高校選びの中でどうしても気になる要素が「卒業後の進学実績」でしょう。どんな学校に進学しているのか、難関校にどれくらい合格しているのかといったことで、どんな学校なのかを判断してしまいがちなものです。逆に「進学実績で学校を選ぶべきではない」という考えもあるでしょう。確かに進学実績によって学校の価値の全てを判断することはできませんが、進学実績の良さは、学習指導、進路指導の手厚さを反映している部分もあります。それぞれの学校の基本的な考え方を判断する材料の一つにはなるかもしれません。 多様な進路への対応は? ただ、ここで注意していただきたいことは、難関校などへの進学指導が、学習指導、進路指導の全てではないということです。国内で生活してきた一般の生徒と同じように、難関校に挑戦し、就活をしっかりやって……と進路を考えているのならば、難関校への進学実績は重要です。しかし、「せっかく海外で幼少期を過ごしたのだから、大学や卒業後の進路も日本国内にこだわらず、幅広い可能性を示してあげたい」とお考えの場合や、お子さんが芸術やスポーツなど特定の分野に能力を発揮しており、将来もそれを生かした道に進みたいと希望しているような場合には、注意が必要です。難関校への進学指導には力を入れているが、それ以外の多様な進路を希望する場合については、指導のノウハウを持ち合わせていないことも考えられるからです。「進学指導=多様な進路に対応できる進路指導」ではないことを忘れないでください。 資料にない情報も確認を 学校説明会などで、卒業後の進学実績について説明を受けた場合や資料を受け取った場合には、卒業後の進路の幅広さや多様性についても注目してみてください。多くの保護者が難関校への進学実績に関心を持っているため、それ以外の進路に進んだ生徒もいるにもかかわらず、資料には記載されてないということも考えられます。入学の時点では一般的な進学を考えていても、何かのきっかけで全く違う進路を志望する可能性もあります。そんなときに学校がどう対応してくれるのか、支援体制がどうなっているのかを確認しておくことは、学校の生徒に対する考え方を知ることにもつながるのではないでしょうか。 子どもが笑顔になる学校選び ところで、中学、高校選びに際して、親はどうしても「この学校を出ることによって、子どもの人生はどうなるだろうか」ということを重視します。しかし、それと同じくらい大切なことは、お子さんがその学校で、どんな3年間、どんな6年間を過ごすかということです。相性の悪い学校で数年間を過ごすのと、お子さんが毎日楽しんで登校できる数年間を過ごすのとでは、その後の進路や人生も大きく変わってくるかもしれません。親の視点と同様に、お子さんの視点も大切にすることが、帰国後の学校選びを成功させるために重要なのです。 ☞POINT ・進学実績が学校選びのための重要な情報の一つであることは確か。 ・ただし、進学実績の良さが、多様な進路の可能性を表しているわけではないことに注意。 ・卒業後を気にするだけでなく、笑顔で学校に通える学校選びを。

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